ガスコンバインドサイクル発電の推進により、原発は完全不要に!(その二)

前回の記事 ガスコンバインドサイクル発電の推進により、原発は完全不要に! の続きです。今回はガスコンバインドサイクル発電の燃料である「天然ガス」について書きたいと思います。


週刊エコノミスト 10月10日 臨時増刊号 「エネルギー大転換 ― 世界の潮流はガス黄金時代」 を読みましたが、極めて秀逸なレポートが多く掲載されており、その内容にはたいへん驚かされました。
原発を再稼働しないと、日本経済は沈没する」 というキャンペーンに日本国中だまされてましたが、世界ではすでに 「ガス黄金時代」 が到来しています。天然ガスがエネルギー問題を解決する切り札となることは間違いありません。


国際エネルギー機関等のレポート


JOGMEC 特別顧問の石井彰氏は、記事の中で、世界トップクラスのエネルギー研究機関が公開した、三つのレポートを紹介しています。石井氏は、「どういうわけか、日本の大手メディアでは、これら世界トップレベルのエネルギー専門研究機関の分析や提言がほとんど報道されたことがなく、再生可能エネルギーと反原発に関するプロバガンダ的な発言ばかりが大きく取り上げられている印象がある」と述べていますが、これらのレポートを読めば、世界の潮流が天然ガスに移行しているのがよくわかります。

IEA(国際エネルギー機関)「Are We Entering A Golden Age Of Gas?」―我々はガス黄金期に突入しつつあるか? ― PDF 英語

MIT(マサチューセッツ工科大学)「Future of Natural Gas」― 天然ガスの将来 ― PDF 英語

CERA(ケンブリッジ・エネルギー研究所) のレポート「Pragmatic Pathways to a Low-Carbon Economy」― 低炭素社会への現実的な道筋 ― PDF 英語

追加で、国内の資源エネルギー研究機関、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構) による天然ガスに関するレポート。「世界の天然ガス埋蔵量の急増」― PDF 日本語


IEA・MIT・CERA の三つの機関によるレポートは、いずれも今後天然ガスの比重は必ず高まる、天然ガスこそエネルギー問題を解決する鍵であり、環境問題の切り札になると言ってます。
米EIA(エネルギー省エネルギー情報局) が今年4月に発表した資料によると、シェールガスの可採資源量は約188兆立方メートル。BP(英国石油大手)統計の天然ガス埋蔵量と合わせると、可採年数は約400年に跳ね上がったそうです。しかもこの400年というのは、いわゆる「確認可採残存埋蔵量」*1 という極めて保守的な数字で、非常に大きいと推定される新規発見量は全く入ってないといいます。しかも IEA のリポートでは、天然ガスの利点は膨大な資源量だけでなく、地理的に十分分散していると述べてます。一国・一地域の独占支配とならないため、北朝鮮のように世界的孤立さえしなければ、資源に乏しい日本でも十分に供給をまかなえるでしょう。また中東・アフリカからの海路であるシーレーンだけでなく、アメリカ・オーストラリア・インドネシア等の太平洋ルートから供給が見込めるのは魅力です。

シェールガスの登場により急変する国際情勢


帝京平成大の須藤繁教授は、「シェールガス革命」により国際情勢に急速な変化が現れつつあると分析します。その一つがロシア・中東の地位の低下です。欧州はこれまで天然ガスの輸入をロシアに頼ってましたが、ドイツ・ポーランドシェールガスが開発され始めたため、対ロシア交渉のカードが確保できたと言います。また化石燃料を中東に頼らなくて済むというのは、今後中東の没落に繋がります。
また米国はすでにエネルギー輸入国から輸出国へ転ずべく、天然ガスを武器にした国家戦略を進めており、中国はロシアに対して主導権を握り、天然ガスの輸入価格交渉で揺さぶりをかけてるそうです。

ガスパイプライン構想


他にも注目すべき記事が 「ガスパイプライン構想」。 韓国・台湾では国土幹線ガスパイプラインが整備されてるのに、日本では総論賛成だが、既存権益が脅かされるので各方面から抵抗に遭い挫折、しかし今回の事故による脱原発依存でふたたび脚光を浴びつつあるとのレポートも掲載されてます。この記事ではサハリンからの供給も提言してます。
仮に国土幹線ガスパイプラインの建設費を見積もると、1兆2400億で出来るそうです。実用化の目途が立たない核燃料サイクルの膨大な費用をこちらにまわせば、どれだけ国民全体が得するであろうかと、帝国建設コンサルタントの朝倉社長は述べてます。

二十一世紀のエネルギー戦略


今までエネルギー問題について真剣に考えたことありませんでしたが、エコノミスト誌に掲載された数々のレポートを読むうちに、国家のエネルギー戦略に関するグランドラインというか、青写真というべきものが少し見えてきました。幾つか乗り越えるべきハ―ドルはありますが、天然ガスを最重視するエネルギー政策に転換すれば、再生可能エネルギーの登場を待たずともエネルギー問題を十分解決できます。電力会社は痛い目に合うでしょうが、これも 「自業自得」 と納得してもらうしかないでしょう。

 

*1:一応付言しとくと、技術的にも採掘可能な埋蔵量ね。