中国情報部

#内容の重要性に鑑み、前回のエントリーから中西教授の論文の話を独立させました。

米国防諜官の告白

政治家といい、マスコミといい、どうしてここまで売国なのか。それは中国の浸透工作が成功しているからに他なりません。
「正論」平成18年4月号に中西輝政教授が「中国の対日工作を予言していた米国「防諜官」の驚愕証言」という題でたいへん興味深い記事を寄稿してますが、その一部を引いてみます。

量で圧倒する中国の諜報活動
まず次の産経新聞の記事を読んで、その掲載時期を推測して頂きたい。


<中国情報機関の対日工作について産経新聞とのインタビューに応じた米国の国防情報局(DIA)のN・エフティミアデス分析官は、
「中国の急速な経済発展と、ますます競争が激化するグローバルな経済環境とが相まって、近代化をめざす中国はより重点的に外国技術の不法入手に依拠せざるを得なくなっている」と、日米などでハイテク窃取に血道を上げる背景を説明した。


海上自衛隊も標的
会見の中で同氏は、中国の軍事増強に関連して、「中国の軍事予算は過去五年間に130%もの巨大な増加を示した」ことを初めて明かし、「中国の軍事的脅威は数年前より増大し、今後もこの傾向は続こう」との分析を示した。

同時に最近、ロシアから潜水艦の購入契約を結ぶなどの中国の動きは「日本との尖閣諸島をめぐる領土問題、スプラトリー(南沙)諸島での領土紛争などを力で支配しようとするのが目的で、防衛的ではない」と述べ、「建国以来11回、(近隣諸国との)戦闘を経験した中国軍の今後の動向は懸念の種だ」と憂慮の念を表明した。

中国の日本に対する軍事諜報活動について同氏は「東シナ海での米海軍と日本の海上自衛隊の活動や、日本の戦闘・作戦計画、艦船や航空機、兵力の配備状況、軍事支出の増減、軍事ドクトリンなどが標的だ」と説明した。(以下略)>


「日本の尖閣諸島をめぐる領土問題」などに備えた情報工作といった言葉や、巨大な軍事費の伸び、東シナ海海上自衛隊・米海軍に関する情報をターゲットにした情報収集活動といった内容から、ここ数年内の記事だと考えた読者もいるかもしれない。しかしこれは実は平成七年七月七日付の記事なのである。
そしてこのインタビュー記事は、中国の対日工作の実態を、次のように明らかにしている。

  1. 中国は軍事基盤の近代化を主目的に日本で「極めて攻撃的な」諜報活動を続けており、日米などから窃取したハイテクで軍備増強を図っている。
  2. 中国情報機関の日本での拠点は東京大使館だが、外交官を装った要員よりも、表向きは中国政府機関に属さず、大使館外で貿易や技術、学界などでの仕事をしているように装った要員のほうが極めて攻撃的で、江沢民指導下で一段と目立つようになった。
  3. 中国情報機関員は日本国内で学者や外交官、実業界関係者、学生、様々なタイプの日本人協力者を短期、長期的にリクルートし、長期協力者は「沈底魚」―三月号論文で取り上げたいわゆる「モグラ」―と呼ばれている。
  4. 中国情報機関の基本目的は日本政府内への浸透である。
  5. 治安当局があまり関心を払っていない大学が、アメリカと同様、中国に情報収集のための「巨大な環境」を提供している。


エフティミアデス氏は、CIA と国務省の防諜部門などの情報分析官として、十年間にわたって東アジア方面を担当。このインタビューを受けた当時は国防総省の情報機関である DIA の情報分析官だった。記事では、中国の諜報活動の分析では、数々の中国の非合法工作を摘発してきた米国でも第一人者と紹介されているが、実際、中国側の根拠のない尖閣諸島領有権の主張や潜水艦の領海侵犯などで高まっている東シナ海における日中間の緊張も、いわゆる「媚中派」がはびこる日本の政界・官界にしても、十一年前の彼の予言どおりに展開していることに驚かされる。


エフティミアデス氏はインタビュー当時、『中国情報部』(Chinese Intelligence Operation―邦訳は早川書房より1994年に出版)という著作を出版し、旧ソ連KGB 同様、国内・国外双方で諜報活動を担当する国家安全部人民解放軍総参謀部第二部という中国の二つの巨大情報機関の実態、アメリカなどでの活動ぶりを詳細に論じている。

ベトナム戦争当時には中国情報機関に徴募(リクルート)されたアメリカ人らが反戦デモや座り込みを扇動していたこと、CIA 内にも多数が浸透していること、天安門事件以後、中国から亡命した民主活動家に対する迫害や監視、反体制運動団体への浸透を進めていることなど、驚くべき事例が数々紹介されている。


注目すべきは、国家安全部が1998年、中国駐在のアメリ国務省の暗号担当官を中国人女性との性的関係をネタにスパイ活動をするよう脅迫した事例である。脅迫された暗号担当官は、三月号論文で紹介した「ハニートラップ」工作防止システムに従ってアメリカ大使館の保安要員に報告したため、国家安全部の工作が見事に失敗したケースである。
この事例と日本の上海総領事館員自殺事件を考え合わせると、未だにセックス・スキャンダルを利用した荒っぽい諜報活動を続けている冷戦期と変わらぬ中国情報機関の伝統とともに、日本の防諜システムの深刻な不備に思いを馳せざるを得ない。


エフティミアデス氏の分析で我々が最も注意すべきは、中国がかっての KGB をもしのぐ規模の秘密情報活動を冷戦後終結後も世界中で展開していて、
「中国の諜報活動を成功させているのは、秘密工作の質ではなく量である。その工作の数は西側の防諜と治安当局を圧倒している」「(たとえ米国の情報機関の焦点を中国の秘密工作に移したとしても)中国情報期間は米国や他の西側諸国の政界、産業界、技術界に浸透し続け、その工作をますますグローバルに拡大するであろう」というものである。
この十一年前の「予言」に現在でも危機感を抱かない日本人がいたら、よほどナイーブな人物であろう。


正論 平成18年4月号 55P


中国情報部―いま明かされる謎の巨大スパイ機関

中国情報部―いま明かされる謎の巨大スパイ機関


日本政府内への浸透

いやはや何とも凄い記事です。平成七年の時点でこの体たらくですよ。日本人は基本的にお人よしな民族な上、国全体で防諜意識が極めて低いから、現在はもっと中国のスパイが浸透してるに違いない。まるでウイルス対策ソフトを入れずファイヤーウォールを無効にしたままウィニーしてるパソコンのような状況です。

NHKの台湾捏造番組やチベットウイグル暴動問題における政治家・マスコミの沈黙ぶり。中国寄りの発言を繰り返す経団連幹部の姿を見ると、中国のエージェントは政官財の各界やメディアに深く浸透し、いまや巨大勢力と化していること容易に想像できます。

中西氏の論文の中で一際注目すべきなのが 4 と5、すなわち「日本政府内への浸透」「情報収集のため巨大な環境を提供している大学の存在」です。

政府への浸透は、自民党内の親中・媚中派の存在や自公連立政権を見れば、自民党政権時代にすでに成功しているとみて間違いありません。そういやかってハニートラップにかかったのではないかと噂された総理大臣もいましたしね。「沈底魚」の存在も考慮すると、保守派の政治家の中にも、国家安全部にリクルートされた政治家がいると推測できます。
民主党に国政担当能力が全くないことはいまや誰の目にも明らかですが、民主党政権が崩壊し自民党が与党になっても安全保障に関しては事態を全く解決できないと考える理由はここにあります。まして公明党と連立を組んでるうちは絶望的と言わざるを得ません。出来る出来ないの問題はありますが、個人的には既存政党を全て解体、親中・備中の政党・政治家は全て排除し、愛国心と見識を有する人物で固め直さなければこの国は変わらないと思っています。


「巨大な環境」を提供する大学

次に「治安当局があまり関心を払ってない大学」ですが、私はこの大学、東京都H市にキャンバスを持つS大学であると確信しています。

この大学、現駐日中国大使を初め中国外交官が多く留学したことで知られてますが、中国外交官の正体が国家安全部や総参謀第二部の職員であることを知れば、この大学がスパイの温床になっているのは推測がつく話です。

ちなみにこの大学の創立者、どういう訳か主義思想も全く異なる中国指導部から大変信頼されています。この創立者が代表の団体が出版する機関誌・書籍は極めて中国寄りで、天安門事件が起きた際も中共擁護の立場にまわり、フランスの核実験は非難するも中国の核実験には一切沈黙。機関誌では人権平和を大々的に掲げるも、チベットウイグル弾圧は華麗にスルー等、中国批判の記事が一切載らないのが特徴的です。どうやらこの創立者、とうの昔に中国のエージェントとして徴募(リクルート)されてるのでないかともっぱらの噂です。

中国情報部

N・エフティミアデス氏が平成六年に著した「中国情報部」を読んでみました。絶版になってますが、中古は結構出回っているようです。
現役のDIA情報分析官が書いただけあって、扇情的表現を抑え論文的な話が続くだけに読んでてかなり辛いものがあります。翻訳も上手いと思えませんが、諜報関連の専門用語が多いだけに仕方ないものがあるでしょう。スパイ小説と思って読むとかなり肩透かしに合いますが、極めて冷静な表現で中国の諜報活動の全貌を明かしていくだけに真実の重さがより伝わってきます。

この本によると、中国の諜報機関は「国家安全部」と「人民解放軍情報部(総参謀部第二部)」の二つを中心に様々な諜報機関が存在し、国外はもちろん国内の反体制派も監視・摘発しているとこのこと。そしてこの本が執筆された頃は、西側のハイテク技術奪取と留学生の監視が中心だったようで、欧米で工作員が摘発された事件やエージェントが徴募(リクルート)された事例が紹介されています。

また留学生に関しては、中国の政策指令文書の中で5つのカテゴリーに分類しこう言っている。

●第一カテゴリー
このカテゴリーの人々はより高い政治意識を有し、反政府活動をより正確に理解している・・・。彼らのなかには、我々の必要に応じて、政治的な役割や海外の学生・学者を統一し組織する役割を存分に果たすために、海外に留まって勉強や仕事を続ける者もいるかもしれない。


●第二カテゴリー
このカテゴリーの人々は、ある程度の愛国心を有し、社会主義の母国が繁栄し強くなることを希望している。しかし近い将来には、これらの人々はわれわれの政府の主義や政策に完全に同意しなくなるだろう。それでも、根本的な政治視点から政府に反対することはない・・・。


●第三カテゴリー
このカテゴリーの人々は、イデオロギー的に西側の価値観により深く影響されており、政治的にわれわれの主義や政策とは異なる意見を持っている。したがって、彼らには国に奉仕するために帰国する計画はない。しかし彼らは、反政府運動に積極的に参加する人々の集団には属していない・・・。


●第四カテゴリー
これらの人々は、反政府運動に参加してきた活動家である。われわれは、これらの人々に対して、批判、教育、必要な理論闘争を遂行し、彼らを分断る政策をとらなければならない・・・。


●第五カテゴリー
これらの人々は、反政府運動を積極的に組織し計画する反動的な中核分子である。彼らこそ、われわれが正体を暴いて撃つべき標的である・・・。


中国情報部 第五章 対外工作 80P


として、さらに民主活動家の名前を何人か挙げ、「邪悪な指導者」と言い切り、「容赦なく打撃を加えよ」とまで言っている。これを読むと、なぜ中国が劉氏のノーベル賞受賞に反発するのかよく判ります。彼らにとって劉氏は第五カテゴリーに属する反動的中核分子の代表であり、今回の受賞は何があっても断じて認める訳にはいかないわけです。

この本を読むと「日中友好」という言葉がいかに虚しいかよ〜くわかりますね。中国問題に興味のある方はぜひ読んでみるといいでしょう。


・・・とここまで書いたところで、おや、こんな時間に誰かきたようです・・・。ちょっと玄関いってきますね。では!